青々とした海と豊かな自然、美味しい食材。そして、温かい人々。
“離島”と聞くと、そんな美しいイメージが思い浮かぶ。しかし、ものが少ない不便さやアクセスの悪さといったあまり前向きではないイメージも、まったく連想しない、と言ったら嘘になるだろう。

いま、そんな“離島”に対するマイナスイメージを払拭し、離島を活性化させようというプロジェクトが動いている。その名も、「Re島PROJECT」。文字通り、遠く離れた島である“離島”を、Refreshできる島、Returnしたくなる島“Re島”に変えよう、という試みだ。

 
 

「ここ、観光ガイドには載ってないけど、お気に入りの場所なんです」
Re島PROJECT運営メンバーのひとりである、壱岐市役所地域振興推進課の市山恵さんは、徐々に暖かくなってきた春の岬を歩きながらそう言う。

 
市山さんは、福岡市と対馬市、壱岐市、新上五島町、五島市、屋久島市という五つの離島の活性化を目指すRe島PROJECTのなかで、情報発信や五つの離島と福岡市五地域との連携役を担っている。
五つの離島はそれぞれに他の島にはない魅力を持っているが、同時に他の島とは違った課題も抱えている。プロジェクトは、六自治体が連携して五つの島が持つそれぞれの課題を解消し、観光客や移住者を増やすことを目的として二〇一六年に発足した。

 
たとえば、美しい自然が手つかずのまま残る屋久島は、いまも昔も観光名所として人気の高い島だ。しかし、鹿児島からアクセスする観光客がほとんどで、福岡から飛行機の直行便が出ていることはあまり知られておらず、利用者も少ないという課題がある。また、対馬は韓国に近いことから韓国人観光客に根強い人気を誇るものの、日本を含めた他の地域からの観光者数は伸び悩んでいる。
壱岐も、人口の減少や、日帰り客は多いものの宿泊客数が少ないなど、いくつかの課題を抱えている。

 
 

 
そんな離島特有の課題を解決するため、Re島PROJECTが焦点を当てたのは“人”だった。島ごとに発行しているRe島ナビというパンフレットと、二〇一七年に販売した写真集のなかでは、各島の観光名所はもちろん、そこで働き、暮らしている人をピックアップして紹介している。
壱岐の例で言えば、東北から移住してきた海女の妻と漁師の夫が営む「みなとやゲストハウス」や、男嶽神社といった著名な神社の神職にスポットが当てられた。

 
それはやはり、“人のよさ”こそが離島の魅力にほかならないからだ。「島は、人がいい」とは島に住む多くの人が口を揃えて言うが、進学や就職で島外に出たことをきっかけに、あらためてそれに気づく人が多いと市山さんは言う。

 
 

 
「私も進学で一度島を出てるんですが、最初はまったく壱岐に帰ってきたくなかったんです。なにもしたくなくてぶらぶらしてたら、親に怒られて連れ戻されたという(笑)。でも、壱岐に帰ってきて、市役所で観光の担当になってからですかね。壱岐のことを知ろうと思っていろんな場所に行くようになったら、この島とここに住む人たちのよさに気づくようになりました」

 
壱岐では、小学生や制服姿の中学生とすれ違うとき、必ず「こんにちは」と声をかけられる。はきはきと挨拶する子も、少しはにかみながら言う子もいるけれど、皆、自然にそうする。ふらりと訪れた店や観光地でも、「どこから来たと?」とにこやかに声をかける人が必ずいる。

 
「壱岐は、人に関わろうとする人が多いんですよね。ご近所さんから野菜もらったりとか、いまあんまりないじゃないですか。そういうことができるのはいいところだな、と思います。私は歳を重ねたいまのほうが、壱岐のことが好きです」
プロジェクトを引っ張る市山さんは、日が落ちて風が出てきた岬を背に、壱岐の“人”のよさについて熱心に話してくれた。冷たい風に体をさすりながらも笑顔を絶やさない彼女の姿そのものが、壱岐の人の魅力を雄弁に物語っていた。

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歳を重ねてからこの島が好きになった──離島を再生する「Re島PROJECT」(前編)

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