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壱岐で古くから愛される“うに”専門の水産加工会社、壱岐水産。会社の顔とも言える定番商品のパッケージリニューアルという、大胆なアイデアを実行に移したのは、ことしで入社二年目を迎える若手社員の渡辺菜津美さんだ。

 
 

「リニューアルにあたって、壱岐では人気の高い『うにめしの素』を、島外でも売れる商品にしていきたいと思ったんです。壱岐って九州ではよく知られた島なのですが、関東や関西ではまだまだ知名度が低くて。壱岐のうにやその伝統的な食べ方を、島外の人たちにももっと知ってほしいなと」

自社の商品の中から、うにめしの素のほかに「粒うに」と「うにあえもの」(新しいパッケージでは「粒うにと貝」)というふたつの人気商品もあわせて選び、リニューアルのアイデアを練った。パッケージを任せるデザイナーは自分の手で探し、自らコンタクトをとって福岡のデザイン事務所まで会いに行き、熱い思いを伝えたという。

「著名なデザイナーさんだったのでお仕事を受けていただけるかは正直わからなかったのですが、壱岐水産のことを話したら、歴史ある会社だと思ってくださったみたいで。その中で、若い力を使って島をPRしたいという私の姿勢をおもしろがってくださって、うれしいことに快諾いただけました」

最初は、シャープな印象のデザインをイメージしていたという渡辺さん。しかし、実際に壱岐水産を訪れてうに加工の様子を見たデザイナーの提案は、すこし違ったものだった。

「しゃんとしたデザインもいいけれど、もっと背伸びをしないアットホームな雰囲気のほうが、この会社に合うんじゃないかと言われたんです」

 
 

壱岐水産では、うにの加工に関するすべての作業が、わずか四名の社員の手によっておこなわれている。うにの選別、水切りといった細かな工程にいたるまで、機械は一切使わない。そんな手作業のぬくもりが伝わるようなデザインがよいのではないか──。そんな提案を受けて話し合いを重ねた結果、新商品のパッケージが決まった。

商品のPRに関しては、当時、壱岐にオープンしたばかりだった仕事サポートセンターの「Iki-Biz」に相談。プレスリリースなどで新商品発売の情報発信をしてもらった一方で、渡辺さん自身も壱岐水産のホームページやSNSを開設し、PRに奔走した。そして二〇一七年の十二月、いよいよ商品の販売が始まる。

「商品を置かせていただいている島内のお土産物屋さんから、『若い子がうにめしの素を見て、かわいいって言って買っていくよ』と聞いたときは本当にうれしかったですね。昔ながらの商品なのにパッケージがかわいらしいというところに注目してもらって、すこしずつですが九州以外のお店に置いていただけることも増えてきました。最初は『そんなの本当に売れるの』と言っていた先輩社員も、最近はリニューアルしてよかったねと言ってくれます」

パッケージの愛らしさはもちろん、オンラインでの販売を新たに始めたり、うにを使ったメニューのレシピを自ら開発し、そのリーフレットを商品に一つひとつ同梱するといった渡辺さんの努力もあって、商品は話題になりつつある。

 
 

行動力のかたまりのような渡辺さんは、いつか、うに以外の商品の開発も手がけてみたいと笑顔で話す。しかしその理由は、ただ新しいことにチャレンジしてみたいから、というわけではないようだ。

「壱岐水産ではアカウニ、ムラサキウニ、バフンウニという三つのうにを商品や季節によって使用しているのですが、三種類すべての漁獲量が、環境の変化などもあり減っています。祖父や祖母の代には売り先を探すのが大変なくらいの量のうにが獲れていたらしいのですが、いまは残念ながらそうではありません。いずれはうちも、うに以外の商品も開発していければと思っています」

いま、専業の海女は壱岐の中でも限られた地区にしかいない。海女の登録者数にこそ大きな変動はないものの、高齢化にともない、漁に出られる海女の数が年々減ってきていると壱岐の人はいう。

もしもいつかうに以外の新しい商品をつくるとしたら、島の豊かな食材を使って、「壱岐」という島の名前を代表できるようなものにしたい──。そう語る渡辺さんの声は、おだやかで、力強かった。

 
 
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壱岐という島の名前を代表するような商品を──壱岐水産【後編】

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