「このふたつの貝、似ているようで違う種類なんですよ。この、すこし大きいのが紅貝で、こっちのもっと薄いのがさくら貝……」
大沢邦生さんは、白い砂浜から見つけたふたつの桃色の貝を手にとって笑った。彼は観光客や地元の人たちから頼られるウェブサイト「壱岐砂浜図鑑」の管理人で、壱岐随一の砂浜マニアだ。インタビュー後編では、大沢さんに壱岐の中でも特にお気に入りの“四つの砂浜”について教えてもらった。
前編はこちらから


「まず、大浜。ここは、“奇跡の砂浜”と言う人もいます。これほど広大で遠浅のビーチにも関わらず、いま世界中で問題となっている漂流ゴミがほとんど溜まらない不思議なビーチなんです。なんだか神がかり的なこの景色も、実際に見ると誰もが虜になってしまうんですよ」

大浜の海岸は開発があまり進んでいないため、自然の景観や希少な動植物などが多く残されている。そんな雄大な自然の中をのびる遊歩道を散策することもできるため、夏に限らず、家族連れやカップルがくつろげそうなビーチだ。実は、島の人たちから最も人気がある砂浜だという。


「それから、“乙島の浜”も大好きなビーチのひとつです。非常に小さな砂浜なのですが、前方からも後方からも波が押し寄せる、珍しいビーチとなっています」

大浜海水浴場と錦浜海水浴場という、海水浴客に人気のふたつのビーチの間を歩いていくとひっそり現れる乙島の浜。知らないと見落としてしまうほど小さなビーチだが、大沢さんの言うように前後両側から波が押し寄せるさまは圧巻だ。大潮の満潮時には、海に隠れてこのビーチは見えなくなってしまうのだという。

実際に乙島の浜を歩いてみると、海は透き通って底まで見えるほど美しく、浅瀬では小さな魚が泳ぎ回るのを観察することができる。決して派手なビーチではないが、ひとりで訪れてのんびりするのに格好の場所だ。


「そして、清石浜。ここでは毎年七月の下旬に『夏夢祭』というお祭りが開催されています。マリンスポーツ初心者には難しい環境ですが、このお祭りのときには各種マリンアクティビティのインストラクターがビーチに常駐し、シーカヤックや釣り、サーフィンといったアクティビティを体験できるんですよ。サーフィンの大会も、毎年開催されています」

芦辺港の南東に位置する清石浜のビーチは、五百メートルにわたってM字型に広がっているのが特徴的だ。夏は波が穏やかで、その広さと海の美しさから海水浴客で賑わい、冬場のオフシーズンには地元サーファーたちのホームビーチとして人気がある。

「波が荒いときがあったり、テトラポットがあることで潮の流れが複雑なため、海洋漂着物や砂の動きが激しいという問題もあります。しかし、ビーチクリーン活動などが行われ、多くの人たちの愛情を受けて美しさが保たれているんです。

ちなみに、二○○三年には野生のミンククジラが砂浜に打ち上げられて、地元のサーファーたちと漁協の方々の連携によって沖に返されたことがあり、大きなニュースにもなりました。そんな自然と向き合う地元のみなさんから、自然やその貴重さ、波や潮の流れについての知識など、砂浜のことをたくさん教えていただいています」


「まだ地元の人たちくらいしか訪れないのですが、大島海水浴場というビーチもとてもおすすめです。大島は郷ノ浦の渡船場からフェリーでわたる『渡良三島』のうちのひとつの離れ小島で、浜辺では壱岐の中でも珍しいほど色とりどりの貝殻が見られるのが特徴です」

大島海水浴場は、フェリーで約五○分という時間をかけないと渡れないことから、まだまだ観光客に知られていないビーチだという。しかし、壱岐の中でも抜群の透明度を誇る海を前に、カラフルな二枚貝が浜辺のいたるところに落ちているさまは惚れ惚れするほど美しい。

「壱岐の砂浜って、裸足で歩いても全然痛くないところが多いでしょう。実は壱岐の砂って、九州の中でも砂質が独特なんですよ。貝殻でできていて目が細かいので転がっても痛くなく、全国の砂場の砂として使われることも多いそうです」

 
 
砂浜博士のような大沢さんとビーチを一緒に歩いていると、次から次へと壱岐という島の面白さがわかってくる。

「壱岐島では、数千年……いえ、数万年以上存在する当たり前の風景なのかも。でも例外なく、みんなの大切な宝物だと僕は思います。だからこの景色に価値があるということを多くの方に知っていただけたら、みなさんきっと嬉しくなると思って──」。
そう話しながら、大沢さんは「あっ」と声を上げてしゃがみ込み、美しい色の貝殻を拾いあげる。手のひらに乗せた色とりどりの貝を見せてくれるその目は、少年のように輝いていた。

 
(砂浜写真提供:大沢邦生)

 
 
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砂浜博士と歩く、壱岐の四つの美しいビーチ─壱岐砂浜図鑑【後編】

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